長崎大学感染症研究出島特区について
本学では、熱帯医学研究所、高度感染症研究センター、熱帯医学・グローバルヘルス研究科、医歯薬学総合研究科、大学病院の5つの部局が精力的に感染症研究を推進しており、多岐に亘る研究組織構成が我が国の大学の中でも稀な本学の特色となっています。2021年度にはBSL-4施設が竣工し、これまで大学として整備してきたアジア・アフリカ教育研究拠点とあわせて世界で蔓延するあらゆる感染症についての研究環境が整いました。一方で、別々の部局と言うこともあり機能の分散化が問題となっていました。そこで、2022年4月、これら学内に分散していた感染症研究資源の統合的運用を可能にし、有能な人材を発掘・育成する仕組みとして「感染症研究出島特区」(以下、特区)を新設いたしました。具体的には上記5部局を中核に、関連人材を有する情報データ科学部、経済学研究科、多文化社会学研究科等の医学系以外の部局の協力も得ながら、基礎研究から臨床研究、医薬品開発にかかわる一連の感染症研究の強化・効率化を推進しています。そして、有事(パンデミック発生時等の緊急事態)においては、病原体解析から臨床研究、迅速な治療薬・ワクチン開発プラットフォームとして、トップダウンの緊急対応を行うことを目指しています。
特区は、基礎研究部門、国際臨床開発部門、人材育成部門の3部門で構成されます。教員(研究者)は、特区専任教員に加え、他の部局で個別に研究を展開している感染症研究者が兼任教員として、そのエフォート(業務の配分割合)の一部を割き参加し、特区連携研究を推進します。さらに、本学の感染症研究力の強化のみならず、我が国全体の感染症研究人材の育成を促進する取組として、国内外の大学教員が彼らの所属を残したまま本学で研究者として在籍(5年程度)し、共同研究実施の後、元の大学等に復帰することを可能にする「流動研究者制度」も合わせて整備を開始しました。本制度により優秀な他学の若手教員が本学において研究を実施することにより、本学の研究力の向上が期待できると共に、本学の熱帯医学や新興感染症に関するユニークな研究資源を長期間にわたり全国的に活用できる基盤を作ることで我が国の感染症研究力の向上、そして、広い学術的視野を持った次世代の感染症研究者の育成が期待されます。