学長ご挨拶
永安 武
長崎大学は地球規模の課題解決のためプラネタリーヘルスという概念のもと、特徴ある10の学部や大学病院、研究所等を相互連携し領域にとらわれず地球の健康のために全学の取り組みを続けています。2019年に出現した新型コロナウイルス感染症のパンデミックはまさに、「感染症」が地球規模課題の1つであることを再認識させる出来事でしたが、人類は英知を結集して終息への道を歩き始めています。しかし、今後も新しい感染症は現れ続けるでしょう。
本学は開学(1857年の長崎医学伝習所開設)から、感染症研究に長い歴史を持ち現在では熱帯医学研究所、高度感染症研究センター、医歯薬学総合研究科、熱帯医学・グローバルヘルス研究科、大学病院など複数の部局において基礎研究、臨床研究、医薬品開発、疫学などの分野で先進的な調査研究を実施し、研究インフラの整備と人材育成を行っています。この度、2021年の高度感染症研究センター(旧感染症共同研究拠点)のBSL-4実験施設竣工を機に開催した学長主催の外部有識者会議の提言をうけ、学内の他部局にまたがる感染症研究資源の融合的運用を可能にし有用な人材を可視化して研究を強化・迅速化する組織として2022年4月に「感染症研究出島特区」を開設しました。
この組織改革は平時には学内外の感染症研究の強化・効率化を図りつつ、パンデミック時の緊急事態ではBSL-4施設も活用して病原体分離同定からワクチン・治療薬の迅速な開発、臨床治験を目指す取り組みであり学外研究機関や民間企業とも深く連携を勧めつつ、プラネタリーヘルス学環と協働した政策提言にも資する組織改革を目指しています。今回のパンデミックでは欧米諸国は迅速な研究開発により短期間でワクチンや治療薬を実用化しましたが我が国は著しく後れをとりました。「感染症研究出島特区」が学内のみならず学外・世界との連携を強化して将来のパンデミックにおいて重要な役割を担うことが出来ますよう、皆様のご協力・ご支援をよろしくお願いいたします。